こころね。 このサイトを定期的に見てくださっている方ならご存知かと思う。 2003年春から、私が応援しているストリートミュージシャン、みうらしょうさん(しょうさん)と清永充美さん(きよさん)のユニットの名前だ。 彼らとの出会いは、上京して1年半を迎えていた私の日常をガラリと変えた。 出逢ってよかった。心からそう思える出逢いだった。 彼らの音楽には、いつも癒されてきた。SOUL演歌というらしい。 しょうさんの歌の、きよさんのギター演奏の腕もさることながら、2人の人間性がすばらしい。 観客は、彼らの姿に夢を抱く。そして自らの日常の力に変える。 そんなこころねの楽曲の中に、接吻という曲がある。 接吻。 その曲が出来たのは、確か去年の7月末だったと記憶している。 まだきよさんがしょうさんのサポートギタリストで、こころねというユニットを結成していなかった頃だ。 きよさんの楽曲はカイロに続く2曲目。 きよさんの楽曲提供は珍しかったのと、みうらしょうらしからぬ曲だという前評判も手伝って、この曲を私はどきどきしながら聴いた。 そして魅了された。 こころねのことは、数多くの友人に薦めた。 一人でも多くの人に知って欲しかった。応援する力を大きくしたかったし、何よりこころねの音楽は多くの人に支持される力があると思った。 親友Yに薦めたとき、彼女は完成したばかりの『接吻』を私とストリートで聴いて、この曲を何より気に入った。 「接吻ってタイトルがスゴイね」 彼女はそういった。 「だよね。私、『接吻』って単語を、小学生の頃『こいつら100%伝説』で覚えたの。だから、接吻って言葉にはめちゃめちゃ激しいイメージがあるんだけど。」 こいつら100%伝説、というのは、『りぼん』に掲載されていた岡田あーみん作の少女漫画だが、少女漫画と呼んでいいものかためらわれる作品だった。その作品の記憶が、私の中で15年以上の歳月を経ておぼろげになっている事もあり、何故少女漫画と呼び難いかは文章で説明しづらい。 その作品の世界は、少し古風な物言いで会話が交わされていた。 キスではなく接吻という表現が使われているのもそのためである。 その『接吻』は凄いものだった。 危脳丸(アブノーマル、と読む。そういう名前のキャラがいた)が接吻をするシーンを鮮明に覚えているが、タコのようにすぼめられてにゅっと前へ突き出された口が、獲物にむかってびよーんとのび、ものすごい力で目標物に吸い付く。まるですっぽんのように吸い付いた唇を引き剥がすと、吸い付かれた皮膚は確か変色してしまっていた。 それが、幼少の頃私が覚えた接吻なのだ。 いやらしい、を通り越して、文字通りアブノーマルなイメージがあった。 成人して、未だに『接吻』をそんな風に捕らえているわけではないが、『キス』に比べていくらか激しさを増す単語に思えてならない。 「でも、口づけよりは軽くない?」 親友Yは言った。 「え? 口づけのほうが、接吻よりソフトというか上品なイメージなんだけど?」 私はそう返した。 花の口付け、というキャンディーがあった。 そのCMの、キレイな女声のテーマソングが頭を過ぎった。 「えー、やらしいよ、口づけって!!」 なおも、Yは主張する。 そこで、私はHOTROADの先輩、拓さんとの一年前の会話をふと思い出した。 拓さんは、歴史に詳しい。 そこで、いつだったか『キス』の古い表現について教えてくれた事があったのだ。 「江戸時代、キスのことを何て言ったか知ってる?」 接吻、じゃないの? 私はそう思ったが、実際はもっとディープな表現だった。 「口吸い」 初めて聞く単語だった。 私はこの表現が一番強烈であると思った。 親友Yにその話をすると、彼女は言った。 「確かに、最低レベルは『口吸い』が一番だけど、やっぱり『口づけ』の方が『接吻』よりディープだよ!」 私の中では、『キス<口づけ<接吻<口吸い』という順列になっているのだが、彼女の中では『キス<接吻<口づけ<口吸い』という順列になっているらしい。 バードキス、フレンチキス、ディープキス、など、キスにも様々な名称、種類があるが、そういった明確な名称ではなく、その行為そのものを総合して表す単語にこの様にイメージだけの順列があることが何だか面白いなと感じた。 統計をとってみたい気もする。 貴方が求めるのは、『キス』? それとも『接吻』? 『口づけ』? 『口吸い』? 私は『接吻』がいいと思うのだが・・・・・・そのイメージを人にどうやって伝えたらいいか、悩むところである。 |